Eコマース向けCRMツールの選び方とよくある導入失敗事例

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EC事業を拡大するためには集客だけでなくリピーターの獲得が欠かせないと言われていますが、そのために必須となるのがCRM/MAツールです。

ECにおいてCRMが重視される背景としては、広告のCPA(顧客獲得単価)が高騰し続けており、ビジネスを継続するためにはLTVの向上が欠かせなくなっているためです。

今回の記事ではあなたのECサイトに最適なCRMツールを選ぶために、どのような観点で選べばよいのかと、よくありがちな導入失敗事例をまとめました。CRMツールを選定中の方はぜひ参考にしていただければと思います。

EC向けCRMツールとは?

CRMツールを検討する際に注意が必要なのは、営業支援システムとしてCRMツールと、通販支援システムとしてのCRMツールでは、同じCRMツールといえど全くの別モノということです。CRMツールの中にはそもそもEコマースでの利用を想定していなかったり、もともと営業支援システムとしてのCRMツールをEコマース向けにも対応させているツールも存在しますので、初めからEC向けに設計されたツールを選ぶことが重要です。

例えばとあるCRMツールはBtoBの法人営業向けに設計されており、獲得したリードの管理や見込み客の発見、営業の進行状況の管理などを行うためのツールになっているため、EC通販の施策や分析に活用することは全くできなくなっています。

EC向けに設計されていないツールを導入してしまうと実施したい施策の実行や分析ができない等、導入後に全くツールを活用できないという結果になってしまいます。

一方でEC向けCRMツールの場合は、はじめからEC通販の顧客や実店舗とECサイトを運営しているビジネス向けに設計されているため、施策や分析や将来的な拡張性において安心して導入することができます。

EC向けCRMツールの探し方

検索する場合は単純に「CRMツール」を探すのではなく必ずEC向けのCRMツールを探しましょう。検索ワードとしては「EC CRMツール」など必ずEC/Eコマースといった単語を入れて探します。また、導入事例として少なくともEC通販サイトの事例が紹介されているツールを検討対象にしましょう。EC通販の導入事例が紹介されていないCRMツールの場合は営業支援システムとしてのCRMツールの可能性が高いです。

EC向けCRMツールの選び方

CRMツールといってもEC向けに作られたものだけでも複数の選択肢があります。自社にあったCRMツールを選ぶにはどんな観点で選ぶべきなのか、検討すべきポイントについてまとめました。CRMツールは一度導入すると気軽に乗り換えることは難しいので、しっかりと活用して成果を出すことができるか、慎重な検討が必要です。

1.CRMツールを導入する目的を明確化する

CRMツールを導入すればLTVを増やすことが出来ると考える方もいますが、CRMツールを導入するだけではなく、導入したツールをしっかりと活用することが必要です。CRMツールは道具でしかありません。LTVを増やしたいという漠然とした考えでCRMツールを導入すると確実に失敗しますので、LTVを増やすためにどんな施策を行うのか、どんなターゲットにどんな施策を行いたいのか具体的な目的を持って導入することが重要です。

2.目的に必要な機能を有しているか

目的の施策を行うのに必要なターゲティング機能、配信機能、分析機能など、必要な機能を有しているかも重要なポイントです。その際にあれもこれも優先順位をつけずに検討してしまうと目移りして結論が出ませんので、自社のLTV最大化のためにどんな施策が必要で、そのための機能を優先順位をつけて検討することが重要です。

3.CRMを運用するための体制は十分か

多機能なCRMツールはそれだけ運用工数もかかりますので、そのための体制を構築する必要性も出てきます。理想だけでCRMツールを導入してしまい現実としてツールを活用し運用が可能なのか、そのための人員・スキルは十分なのかも検討が必要です。
運用工数がかかる高機能なツールの場合には戦略・プランニングを担う担当者とオペレーション担当者は分ける必要が出てきます。また設定内容のチェック体制も構築する必要が出てきます。そのような複数体制を構築することが難しい場合は運用工数をかけずにどこまで自社に必要な施策を多様にできるかが重要なポイントです。高機能なら良いという訳ではないということです。

4.どんなサポートを受けられるか

操作面のサポートだけではなく、自社のビジネスに対してCRM領域においてどのような課題があってどのような施策を行うべきなのかまでサポートできるベンダーを選ぶことが重要です。判断基準としては、ツール導入前の段階で具体的にどんな課題が想定できてどんな施策を行うべきか、それによってどんな効果を期待できるかまで営業マンが明確に答えられるかどうかは重要な判断ポイントです。

EC向けCRMツールの導入でよくある失敗ケース

1.CRMツールの導入が目的になってしまうケース

IT業界では定期的にバズワードが出てきます。目的を明確にせずに流行りなので、他社も導入しているからという安易な理由で、導入自体が目的になってしまい失敗するケースも他社ツールでは多く見られます。特に導入事例はイメージ先行であまり具体的な内容が出ない(出しても利用企業にメリットはない、むしろ成功事例ほど出したくない)場合がほとんどですので、自社にどんな問題があってそれをどう解決したいのかという目的を大事にしてください。

2.分析が目的になってしまうケース

顧客の分析はLTVを増やすための手段でしかありません。またいくら細かく分析してもそこから顧客に対するアクションに落とし込めなければ成果にはつながりません。
顧客に対する仮説がないと、そこから実行したい施策イメージも浮かばないので、その状態でシステムを導入してもうまくいきません。少なくとも自社の顧客はこんな状態なのではないか、こんな問題があってそれに対しこんな施策が有効ではないか、それにはこんな分析が必要になる、といった仮説がある程度のイメージで構わないのでできている必要があります。

3.やりたい施策ができない/想定外の工数がかかる

CRMシステムにはもともとBtoB営業管理向けのシステムからスタートしたものなど、EC向けではないシステムが意外に多く存在します。その場合EC向けの施策が仕様上実現できず、せっかくシステム導入したのに当初予定していた施策ができなかった、という失敗につながってしまいます。例えば定期継続中の顧客に対し3回目の出荷から2日後に、次回お届け時のプレゼント特典を案内する、といった施策を行いたい場合に、そういったターゲット抽出が仕様的にできない、もしくは実現するにはデータ加工で面倒な工数がかかるなどです。

4.システムベンダー側の知見が少ない

EC通販に特化したシステムではない場合、システム環境は整っても肝心の成果を出す施策を実行出来ないケースが多く見られます。
EC通販に特化したシステムベンダーの場合、様々な業種での課題に直面し対応しているため豊富な知見をもとに自社の課題を解決できる可能性が高くなります。

5.何でも出来る=何もできない

高機能を売りにしているシステムは、運用工数が膨大になりがちです。設定の自由度が高いということは設定項目が多くなったり設定が複雑になるため工数がかかるうえに操作方法の習得に時間がかかってしまいます。結局何でもできる=何もできないということになりがちです。高機能なシステムを活用するにはそれなりの高度なノウハウと運用体制(専任の責任者と複数の作業者)が必要になります。EC通販のCRMにこういった体制を構築できるケースは大規模な企業でも非常にまれです。

6.インパクトの小さい施策に工数をかけ過ぎてしまう

CRMはインパクトの大小に関わらずターゲット抽出から原稿の設定、自動配信の設定など細かい雑多な業務が無数に存在します。知識がある方が意外に陥りがちなのが、工数をかけることが当たり前になってしまうと気づかぬうちに成果に見合わない工数をかけてしまい非効率になりがちなので注意が必要です。

7.最初から盛りだくさんの機能を実装して使い切れない

CRMシステム導入の際にあれもやりたい、これもやりたいと夢ばかり膨らんでしまい、いろいろな事ができる多機能なシステムを導入したが、結局それを活用しきるだけのノウハウや運用のための時間を確保できず、大半の機能が使われないままになってしまうケースです。
システム導入時にしっかりと目的と具体策、優先順位を明確にしていれば防げる失敗です。

8.安価で手軽なツールを導入したが結局たいした施策ができない

高機能なシステムは初期導入費用が高額なので結局妥協して安価で拡張性の無いツールを選択してしまうケースです。システム導入したはいいもののセグメント条件や施策の自動化で制約が多く、仕様的に大した施策ができず目立った成果を出せません。このような場合は早々にシステムの乗り換えになってしまう場合が多いです。こちらも事前に目的と具体策、優先順位を明確にできていれば防げる失敗です。

9.電話帳のような分厚いマニュアルを渡され途方にくれる

デモ画面も確認しその時は直感的に操作できると思ったものの、いざ多機能なCRMツールを導入した後に電話帳のように分厚いマニュアルを渡され途方にくれてしまう、サポート窓口はあるものの何が分からないかも分からない状況、事前に必要な機能を洗い出せていないとどの機能から使えばよいのか整理ができず結局多機能なツールを導入しても使いこなせないという結果になってしまいます。

10.操作を習得するのに数ヶ月単位の時間がかかる

しっかりとしたサポート体制ということで導入を決めたが、高機能過ぎてとにかくツールを習得するのに時間がかかり過ぎるため、サポートがしっかりしていても自社の担当者の時間を避けない、仮にその担当者が習得できたとしてもその担当者に何かあった場合に他の人間で全く対応ができないという問題が生じます。社内での運用が難しいため高い費用を払って運用を外部委託することになります。
これを避けるには自社で運用しきれないツールを導入しないよう注意が必要です。

11.現状の業務をそのまま出来るシステムを探す

自社の複雑な業務をそのまま行えるシステムを探しても、完全に同じことをできるシステムは存在しません。結果として社内で話がまとまらずシステム導入を決断できなくなり他社に後れを取ることになってしまいます。これを避けるには現在の業務が本当に必要なものなのかをしっかりと判断し現場視点だけでなく全体視点で俯瞰して整理する必要があります。

12.現状の業務にあわせ膨大なカスタマイズする

こちらもよくある間違いで現状の業務をそのまま行えるように膨大なカスタマイズする前提で導入を進めてしまうケースです。導入企業とシステムベンダーの間にコンサルとして中立的な立場で入る存在がないとベンダー側は導入企業側の要求どおりカスタマイズしてしまうため業務改善されないままシステムが導入されてしまいます。結果として時間と費用ばかりかかり非効率な業務は改善されないだけでなく、システムも使いにくいものになってしまいます。これを防ぐにはカスタマイズが必要と判明した場合に、本当にその機能は必要なのかをよく考える必要があります。

13.機能盛りだくさんのツールを導入したが使いこなせない

ECのCRM担当者が1日に行う業務は多く、優先順位の低い施策や機能は結局使用されずに終わります。
あれもこれもと多機能なツールを選びたい気持ちはわかりますが、一旦立ち止まり、
自社にとって今必要な機能、今後必要になりそうな機能をしっかりと切り分ける必要があります。
今必要なものだけを取り入れ、かつEC事業の成長ステージにあわせ将来的な拡張性があるCRMツールを選びましょう。

14.カスタマイズを入れすぎて初期費用が膨大になる

これはカスタマイズの箇所でもありましたが、現状行っている分析、業務なども同じように対応できるようカスタマイズを入れたり、無くてもよいがあったらよい機能を追加していった結果、初期費用が膨大になり結局導入を決断できない失敗です。現状のビジネス規模とCRMシステムでの期待効果からこの程度まで費用をかけられる、と予算を明確にしたうえで、費用対効果のあう範囲で最低限必要な機能に絞ってスタートすることでこの失敗を避けられます。

15.ノウハウがなく施策を形にできない

施策を行うべきターゲット、タイミング、コンテンツ、チャネルを見極め効果的な施策を行って課題解決していくには様々なノウハウが必要です。例えば仮説の立て方から始まりその仮説を確認するにはどんな分析軸でどんな指標を見ればよいか、そこからどんなデータをどう利用して施策として形にするかなど、広く深いノウハウが必要になります。このノウハウが無いためにツールを導入しても分析だけで終わってしまい、そこから顧客へ届く施策として形にすることができません。顧客の目に見える形での施策がないと当然ながら成果も出ません。このケースが最も多い失敗パターンです。

16.担当者が複数の業務を兼任しており時間を確保できない

仮にノウハウがあったとしてもそれを施策として形にする時間を確保できないという失敗が起こりえます。特に高性能なシステムほど設定項目が多かったり事前のデータ加工が必要となり、CRMの推進には多くの時間と工数を必要とします。この時間が確保できずにうまくいかないという事態にならないような対応が必要です。

まとめ

今回の記事ではEC向けCRM/MAツールの選び方・よくある失敗をまとめました。
CRMツールの導入・リプレイスというのは長年EC業界にいてもそう何度も経験するようなことではないので、経験豊富なコンサルタントに相談したり知見のあるツールベンダーに相談して、自社に最適な判断をできるようにしましょう。

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