EC担当者が知っておくべきCRM・MAツールの基本

Chapter

ECサイトにおけるCRM/MAツールの重要性

2020年の緊急事態宣言から2年が経過し、コロナ禍におけるビジネスのあり方は消費者の外出自粛、対面商談機会の減少なども相まって既存のビジネス手法や消費者の生活様式を一変させる結果となった。
中でも小売り・流通業界はデジタル化に舵を切り成長著しいEC業界に活路を見出す企業が増えることとなった。
EC業界への参入企業が増えるにつれて競争が激化し、EC事業の継続的な成長のためには新規顧客獲得のみならず既存EC会員をいかに育成し自社の顧客に繋ぎとめられるかという点に注目が集まるようになる。
新規顧客獲得コストは増加の一途を辿るため既存顧客のLTVを向上させなければもはや集客コストが賄えないところまで来ている。
既存顧客からの売上利益を上げることは新規顧客獲得を行うよりも容易く尚且つ事業を安定化させ競争を優位に進めることが可能なため各EC企業はリピーター対策に力を入れることが急務だ。
そこで注目を集めたのがCRM/MAツールである。

CRMツールとは

そもそもCRMとは「Customer Relationship Management(カスタマーリレーションシップマネジメント)」の略で顧客満足度と顧客ロイヤルティの向上を通じて、売り上げの拡大と収益の向上を目指す手法だ。
それを実現するためのツールがCRMツールとなり、ECサイトにおいては各EC会員の名前、住所、メールアドレス、購買履歴、コミュニケーション履歴等の顧客情報を一元的に管理記録するツールになる。
CRMの目的は顧客満足度と顧客ロイヤリティの向上を通じて売り上げ及び収益の拡大することである。
従って一元化された顧客データを分析することでEC会員ごとのプロモーションが可能となりこれから説明するMAツールなどとも連携されるケースも多い。

MAツールとは

MAツールとは「Marketing Automation(マーケティングオートメーション)ツール」の略で、一言でいうとマーケティング施策全般を自動化するツールの事である。
具体的には新規顧客の獲得や既存顧客の育成に関わる施策を自動化することでより効率的な営業活動が可能となる。
日本においてMAツールが本格的に注目されるようになったのは2013年頃からで、その時代背景としてはスマートフォンの普及により顧客接点が増え顧客情報が取得しやすくなった点、顧客を可視化しデータに基づく意思決定を行う事や企業の営業活動におけるマーケティング施策の重要性が高まったことなどが上げられる。
ECサイトにおけるMAツールの活用例としてはEC会員をスコアリングしメールやLINEなどを通じてEC会員ごとにメッセージ配信を自動化することで継続的にアプローチすることなどが考えられる。
多くのMAツールはマーティングを自動化するためのデータソースが必要となる為、顧客情報が的確に管理記録されているCRMツールと連携することとなる。

CRMツールおよびMAツールと市場規模

既顧客接点の改善や顧客育成の高まりから国内CRM/MA市場も拡大を続けている。
ある調査会社によれば、2021年度の国内CRMアプリケーション市場は、前年比13.0%増、市場規模(売上額ベース)1,812億1,800万円となり、今後2021年~2026年の間でCAGR 10.0%で推移し、2026年には2,917億9,000万円になると予想されている。(※1)
また別の調査会社によると2021年にはDMP/MA市場規模は売上ベースで600億円の見込みで、
2026年には865億5,000万円まで拡大すると予測されている。(※2)
市場拡大の背景としてはECなどオンライン事業を展開しているユーザー企業や中堅・中小企業におけるデジタルマーケティングツールへの投資が順調に進んだことなどが上げられ、もはやMAツールは大企業のみが扱うツールではなくなってきている。

CRMツールとMAツールの違い

CRMツールとMAツールの違いとしては顧客情報を一元化し最適な管理を行う点(CRMツール)と、その管理された顧客情報を用いて効果的なマーケティングを自動化する点(MAツール)が大きく異なる。
特にECサイトの場合、CRMの最終ゴールは既存顧客との関係性を向上させLTVの最大化を目的としている。
その為CRMツールは既存顧客にまつわる情報を常にアップデートし最新の情報に基づきマーケティング施策に生かせるよう適切に管理されたツールとなる。
MAツールはCRMツールで適切に管理された情報を元に見込み客の発掘や育成などを可能とする。
ECサイトが活用するCRMツールの多くはメールやLINEなどのメッセージ配信機能が搭載されているもの(CRMツールとMAツールがセットになっているもの)が多く、大きく機能別に高機能なCRM/MAツールと簡易なCRM/MAツールまで大別される。

CRM/MAツールの選び方

ECサイトにおけるCRM/MAツールの選定は非常に重要な決定事項である。
なぜならば、比較的長期間にわたり使用することが前提(基本的には1年間は活用するケースが多い)であり、継続的な費用が発生するからである。
CRM/MAツールも最終的な導入目標を達成するための道具であり使いこなせなければまったく意味がない。
高機能なCRM/MAツールは様々な顧客データを一元的に管理しマーケティングに活用できるのが特徴だが、運用工数もかかり費用も高い。
逆に簡易的なCRM/MAツールはマーケティング施策の部分に制限があり自社で行いたい施策が十分にできない可能性もある。
ツールの導入目的を明確にしたうえで自社のリソースに合ったツール選びが求められる。

まとめ

ECサイトにおける新規顧客獲得の広告はGAFAと呼ばれる広告プラットフォーマーが抱える膨大のデータに基づき個人ごとにパーソナライズされた広告が主流となっている。
同時にAmazonに代表されるようなECのマーケットプレイスでも膨大な顧客データを元にした顧客中心のCRM施策が行われている。
大手ECサイト及び中小規模のECサイトにおいても今後既存顧客への接点及び育成、販促もパーソナライズされたメッセージ配信が主流となるであろう。
EC業界への新規参入が増えて競争が激化するにつれて新規顧客獲得コストが増加し、各EC事業者はEC会員のLTVを最大化させて、事業を安定成長させられるかの戦いになっている。
EC会員のLTVを最大化させるためのツールとして顧客データを適切に管理するCRMツール、マーケティング施策を自動化するMAツールの市場は今後も拡大が予想される。
CRM/MAツールの導入を成功させるためにはツール導入目的の明確化及び自社リソースに合ったCRM/MAツールの導入が求められる。

【参考】
(※1)https://www.idc.com/getdoc.jsp?containerId=prJPJ49281422(※2)https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/2851

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