CRMに真剣に取り組むEC事業者が急増!その背景と課題

Chapter

ECサイトの最大の課題は新規顧客獲得だが…

2022年を振り返るとEC通販業界は大きな転換期にあったと考えられます。経済産業省の発表によると2021年度物販分野のBtoCEC市場規模は13兆2865億円(伸び率8.61%)と依然として小売業の中では高い成長率を維持している一方で市場への新規参入企業が増えたことで競争が激化し新規顧客獲得が困難な状況が生まれています。

ネットリサーチ会社の調べによると「ECサイト運用について、最も課題に感じていること」という問いに対し回答の上位3つが、新規顧客獲得(15.9%)、運用リソース不足(14.5%)、サイト集客(13.6%)となっており、新しいお客様との接点を持ち、そして新規顧客を獲得することが困難になってきていることが伺えます。

また、広告配信技術も高度化し、広告運用スキルや、クリエイティブ制作のスキルなど今までのリソースでは満足なデジタルマーケティング施策が打てない事が課題となっています。広告に関してもメディア側の広告審査基準の厳格化により特に効果効能を売りにした化粧品、健康食品といった商材の従来通りの表現での掲載可否が通り辛く、アフィリエイト広告への規制からも満足のゆく広告配信ができない状況が続いています。

ECサイトの2つの方向性

そんな中でECサイトとしては生き残りをかけて二つの方向性を模索しています。

①新規顧客獲得の効率化

新規顧客獲得の効率化についてはAmazon、楽天、Yahooショッピングといったモールを強化して新規顧客を開拓する企業が目立ちます。また、従来型のデジタルマーケティング広告についても知名度の高い著名タレントやYoutuberなどを活用して商品認知度を上げ他社との差別化を図る動きが活発化しています。

ただ同業他社も同じ対策をとる中で新規顧客獲得コストが上昇しており新規顧客獲得の効率化も限界に達しています。もはやCPAの高騰を新規顧客獲得の効率化だけでカバーできなくなりつつあります。

②既存顧客への(CRM)対策の強化

そこで、EC企業においては今まで獲得した既存顧客へのアプローチを見直し、既顧客からの売上を上げることでCPAコストを補う戦略に舵を切りつつあります。今まで自社の既存顧客へのCRM施策をあまり行ってこなかったECサイトが本格的にCRMに取り掛かり始めています。

CRM施策の良いところは、一度自社サイトで商品購入している顧客のため、新規顧客を獲得するよりも容易に安定した売上が上がりやすい点、オープンではなくクローズドな環境(自社サイト内)での施策の為、他社に戦略の全体像が分かりにくく真似されにくいという点が上げられます。

ある総合広告代理店の調査によると「既存LTVの最大化」を除くEC事業者へのアンケートにおいて、今後のマーケティング戦略として「CRMに注力したいか」を問うたところ、「ややそう思う」が61.8%、「非常にそう思う」が11.7%となり、実に7割を超えるEC企業がCRMを強化したいと回答をしています。

今後新規顧客獲得の効率化に加えて、新たにCRM対策の強化は避けて通れないと考えられます。

CRM失敗に共通する3つの課題

ただ、現状LTVを最大化させるCRM施策を行うにも様々な課題が山積しています。CRMに取り組むにあたり課題は何か?というアンケートに対して多かった回答は

  • 「新規顧客獲得や多業務を兼任しており時間が取れない(40%)」
  • 「どの様な施策を打てばよいのかわからない(40%)」
  • 「顧客に合った施策かどうかわからない(32%)」

などが上げられます。

主にCRMが失敗する大きな理由としては

  1. 時間が足りない
  2. ノウハウがない
  3. システム環境がない

という3点が上げられます。それぞれの課題について詳しく見てみましょう。

1.時間が足りない

これはまさにヒューマンリソースの問題であり、中小EC企業にとっては共通する課題となります。ECサイト運営には様々な業務が発生しそれを兼務する形で運営されている企業がほとんどです。

具体的には商品企画、ECサイト制作、仕入れ業務、販促業務、受注対応、在庫管理、梱包発送、アフターサービス等を少人数で行うため必然的に既存顧客へのフォローに避ける時間が無くなります。CRMに長けた人材を登用することでこの問題は解決できるように思えますが、そもそもCRMの専門家はEC業界でも少数で採用が難しい状況です。

2.ノウハウがない

どのようなこと行えば既存顧客が喜びECサイトの売上が上がるのかわからないというノウハウの問題です。これはCRMがクローズドな自社サイト内での施策の為、他社の情報があまり入ってこない点も関係しています。

例えばメルマガの開封率が自社は競合と比較して高いのか?低いのか?、業界平均としてはどうなのか?、メッセージの配信頻度は顧客にとって適切な頻度なのか?、この施策が本当に売り上げにつながる施策なのか?、大規模なEC事業者であれば様々な業界事例に精通したコンサルタントを登用するケースもありますが、大多数のECサイト担当者は手探りの状態で過去の施策と比較して良し悪しを決めているのが現状です。

3.システム環境がない

分析や施策に必要なデータが不足していたり、使える形で整理がされていないというシステムの問題です。

この問題で良くある失敗はCRMツールを導入すればすべてが解決するだろうという考え方です。もちろんCRMツールは顧客管理を行い顧客データを可視化して販促に使うための道具ではありますが、そのツールの良し悪しや使いこなせるか否かは実際に使ってみないと分からないのが現状です。

安易によく聞くツールだからと言って導入したけれどもデータリテラシーが足りないために折角のCRMが宝の持ち腐れになってしまうのはよくあるケースです。

CRM対策の失敗を未然に防ぐには

CRMが失敗する3つの課題に対する対処法をご紹介します。

【解決編】1.時間が足りない

人的リソース不足については、人を増やさないという前提に立てば自社のリソースの見直しを行うと共にCRMにかかる工数を洗い出し、日々の運用工数を徹底的に削減するようにすべきです。

具体的にはメッセージ配信業務は自動化できる施策はすべて自動化し人がCRMにおいて携わる業務を極力クリエイティブな業務に集中させることです。そのためにはパーソナライズされたメッセージ配信はAIを使って自動配信するようなCRM・MAツールの様なシステムの力を借りることは必要不可欠です。

【解決編】2.ノウハウがない

CRMのコンサルタントを雇わないという前提に立てば、自分で様々なECサイトで商品を購入しどのようなメッセージが届くかを確認するEC業界の人脈から情報を仕入れるCRM・MAツール提供会社から他社で成功した施策内容をヒアリングする等が上げられます。

【解決編】3.システム環境がない

システム環境については自社にとって最適なCRMツールが何なのかを事前に見極めるのは難しいですが、機能面としては顧客軸でデータを統合できるかすぐにシナリオが走らせることができるかCRMに必要な分析ができるかなどを考量する必要があります。

さらにEC関連事業者からの情報やカート提供会社からの情報、口コミサイトの評価、自社のリソース(データリテラシーの有無、SEがいるかいないか等)、実際の月額の利用料金が費用対効果に合うかどうか等を総合判断で決めるのが良いと思います。CRMツール提供者によっては事前に導入後のシュミレーションを提出してくれるところもあるので事前に確認してみるのも良いと思います。

まとめ

消費者にとってネットショッピングが身近になった現在において、EC事業者が顧客との関係性を強化し顧客のLTVを向上させる動きはこれからより活発になると予想されます。新規顧客獲得と既存顧客の育成は両者が上手くつながることでEC事業は拡大します。EC事業者には限られたリソースの中で新規顧客獲得の効率化とCRM施策の強化が求められます。

参考①:PR TIMES「20歳~69歳の男女743人に聞いた「EC運用の悩みに関する調査」」
参考②:日本ネット経済新聞「【東通メディアがCRMの意識調査】EC・通販事業者の約8割が「新規顧客獲得が困難に」と回答」

関連タグ

この記事をシェアする

サービスについて詳しく知る

貴社にあったご利用方法もご提案いたしますので、お気軽にお問い合わせください。

お問い合わせ