EC担当者が混乱しがちな「CDP」と「CRM」──データ活用の視点で考える本当の違いと実践解
Eコマースの現場ではここ数年、「CDP(Customer Data Platform)」という言葉を耳にする機会が急速に増えています。
一方で、多くのEC事業者はすでにCRMツールを導入しており、「CRMがあるのに、さらにCDPが必要なのか」「CDPは大企業向けの仕組みではないのか」と疑問を感じているのではないでしょうか。
特に中堅・中小規模のECでは、「データ基盤」という言葉そのものがハードルになり、検討以前に選択肢から外されてしまうケースも少なくありません。
しかし実務の現場を見ていると、ツールの問題というよりも、“データの捉え方”や“活用の前提”が整理されていないことで、CRM施策が頭打ちになっている場面を数多く目にします。
本コラムでは、CDPとCRMを単なる機能比較で語るのではなく、「データ活用の役割分担」という視点から整理します。そのうえで、「なぜCDPは大企業向けと言われてきたのか」「どの段階のECでCDP的な考え方が必要になるのか」を掘り下げ、現実的な向き合い方を解説していきます。
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CRMは『施策を回す仕組み』、CDPは『判断材料を整える仕組み』
CRMは、顧客とのコミュニケーションを実行するための仕組みです。ECであれば、購入履歴や会員情報、過去の配信反応などをもとに、メールやLINE、SMSといったチャネルで施策を配信し、リピート購入を促進します。誰に、いつ、どんな内容を届けるかを効率よく回すための“実行基盤”と言えるでしょう。
一方で、CRMが前提としているのは「すでに整理された顧客データ」です。どの顧客が、どの商品を、どんな経緯で購入したのか。その背景が十分に整理されていなければ、施策は担当者の経験や過去の成功体験に依存しやすくなります。その結果、似たような施策が繰り返され、改善の余地が見えにくくなっていきます。
CDPは、この前提条件そのものを整えるための仕組みです。Webサイト上の行動ログ、購入履歴、広告接触、場合によっては実店舗データなど、分散して存在するデータを顧客単位で統合し、「判断に使える状態」にします。CDPは施策を直接配信するわけではなく、CRMやMA、BIツールにデータを供給する“土台”として機能します。
ECの実務に置き換えると、CRMは『アクセル』、CDPは『メーター』に近い存在です。どれだけアクセルを踏んでも、スピードや方向が把握できなければ、安定した成長は望めません。この役割の違いを理解することが、CDPとCRMを正しく使い分ける第一歩になります。
なぜ『CDPは大企業向け』と言われてきたのか
CDPが「大企業向け」と言われてきた背景には、いくつかの現実的な理由があります。まず一つ目は、CDPが生まれた文脈です。CDPは、広告、アプリ、実店舗、コールセンターなど、多数の顧客接点を持つ企業が抱える「データ分断」の課題を解決するために発展してきました。そのため、初期のCDP事例は必然的に大企業が中心となりました。
二つ目は、導入・運用コストの問題です。CDPは単体で完結するツールではなく、既存の基幹システムや外部サービスとの連携が前提になります。データ設計やETL開発が必要になるケースも多く、IT部門や外部ベンダーを巻き込んだプロジェクトになりがちでした。結果として、「コストが高く、難しい仕組み」という印象が定着していきました。
三つ目は、組織構造との相性です。CDPは部門横断でデータを活用することを前提としています。しかし実際には、マーケティング、EC運営、IT、分析が分断された組織も少なくありません。その場合、せっかくCDPを導入しても活用が進まず、成功事例が生まれにくかったのです。
重要なのは、これらはCDPという考え方自体が大企業専用という意味ではない点です。過去の導入形態や成功事例の偏りが、「CDP=大企業向け」というイメージを作ってきたに過ぎません。
CDPが必要になるECの『兆候』とは何か
CDPを検討すべきかどうかは、売上規模や会員数ではなく、ECの状態で判断するべきです。実務の中で、次のような兆候が見え始めたら、データ基盤を見直すタイミングに差し掛かっている可能性があります。
たとえば、「なぜこのセグメントにこの施策を打っているのか」を説明しづらくなってきた場合です。施策自体は回っているものの、その背景にある仮説や根拠が曖昧になり、改善の議論が感覚論に寄っていきます。
また、広告データと購買データ、CRMの配信データが分断されているケースも典型的です。個別には分析できても、顧客単位での一貫した理解ができないため、部分最適な判断に留まってしまいます。さらに、担当者が変わるたびに施策の意図や設計思想が引き継がれない場合も、データが『判断材料』として機能していないサインと言えるでしょう。
これらの兆候はすべて、「施策を実行する仕組み」は整っているが、「判断するための土台」が不足している状態を示しています。この段階で初めて、CDP的なアプローチが現実的な選択肢として浮かび上がってきます。
先に整えるべきはCDP導入ではなく『データの前提』
CDPを検討する際に陥りがちなのが、「まずツールを入れよう」と考えてしまうことです。しかし実際には、CDP導入の成否を分けるのは、その前段階にあります。
最も重要なのは、顧客をどう識別するかというID設計です。会員ID、メールアドレス、Cookie、広告IDなどがバラバラに管理されている状態では、同一顧客を正しく把握することができません。この状態でどれだけデータを集約しても、分析結果の精度は上がりません。
次に考えるべきなのは、「どの施策で、どんな判断をしたいのか」という視点です。初回購入から2回目購入までの行動を改善したいのか、休眠化の兆候を早期に捉えたいのか。目的が明確になれば、必要なデータの範囲も自ずと定まります。データを集めること自体を目的化しないことが、失敗を避ける最大のポイントです。
小さく始める『CDP的』データ活用の現実解
現実的なCDP活用の第一歩は、小さく始めることです。いきなり全チャネルのデータを統合する必要はありません。まずは一つのテーマに絞り、そのテーマに必要なデータだけを整理することが重要です。
たとえば、「初回購入後30日以内の行動」を可視化することから始めるだけでも、CRM施策の精度は大きく変わります。この段階では、CRMや既存の分析ツールで十分に対応できるケースも多いでしょう。重要なのは、データを『施策の改善に使う』という成功体験を積み重ねることです。
こうした取り組みを通じて、「次はどんな判断がしたいのか」が明確になったとき、CDPは単なる流行語ではなく、実務に根ざした選択肢になります。ツールの名前に振り回されるのではなく、自社ECの成長段階に合わせてデータ活用を成熟させていく。この視点こそが、CDPを現実的な武器に変える鍵と言えるでしょう。
おわりに
CDPとCRMは、優劣を比べる関係ではありません。CRMは顧客に働きかけるための実行基盤であり、CDPはその判断材料を整えるための基盤です。この役割分担を理解することで、データ活用の議論は一段具体的になります。
「CDPは大企業向け」という言葉に惑わされる必要はありません。重要なのは、自社ECが今どのフェーズにあり、次にどんな判断をできるようになりたいのかを見極めることです。その問いに向き合うことが、結果的にCDPを“使える存在”に変えていく第一歩になります。
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中村 隆嗣