データから見るEC担当者が実践するCRMの理想と現実
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近年、消費者の在宅スタイルが定着し、気軽にインターネットを通じてネットショッピングが楽しめる生活様式が確立され通販・EC業界は成長の一途を辿っています。特にD2C業界は多数の新規参入企業が現れ競争が激化しECサイトを担うECサイト担当者の運用負担も増加しつつあります。
本稿ではリサーチ会社が行った調査結果を元にEC担当者が行うECサイト運用の中でも特に負担が大きいCRM施策について考察してみます。
ECの事業成長にはCRMは不可欠な理由
経済産業省の発表によると2021年度物販分野のBtoCEC市場規模は13兆2865億円(伸び率8.61%)と成長の一途を辿っており、EC化率も、BtoC-ECで8.78%(前年比0.7ポイント増)と増加傾向にあります。市場の拡大と共にEC市場への参入企業も年々増加し競争が激化する中で新規の顧客獲得コストも増加し増加コスト賄うには一度購入して頂いたお客様へのリピート購入が欠かせません。また消費者が企業から受け取るメッセージも増加しています。従来型のメールは元よりLINE、SNSからの発信情報、SMS等様々なメッセージ経路を通じて消費者にメッセージが届けられています。消費者にとっては情報過多になる一方で企業側からのメッセージ配信はそれが適切なものである限り顧客をつなぎとめる有用な手段であることは間違いありません。ブランドスイッチを防ぎ、既存の顧客にリピート購入して頂き長期的な信頼関係を獲得することで成長する通販ビジネスモデルからもCRM施策はECの事業成長に欠かせません。
半数のECサイトでCRM施策は不十分
あるネットリサーチ会社の調査ではECサイトにおいてCRM施策に取り組んでいるECサイト担当者に対してCRM施策は十分にできているかを問うたところ、「十分にできている」「おおむね十分にできている」と回答した方は52.8%、「やや不十分」「不十分」と回答した方は47.3%と半数に近い方が自社のCRM施策は満足に出来ていないという結果が出ています。
また、「十分にできている」「おおむね十分にできている」と回答した方も何かとの比較ではなく自己申告のため、より理想的なCRMがあるがそれが出来ていない可能性は大いにあります。
1番の原因は人的リソースが足りない。
CRM施策が不十分だと回答した方に原因を上位から複数回答で尋ねると1位人的リソースが足りない(40%)、2位顧客データの活用が出来ていない(34.1%)、3位顧客データの分析が出来てない(32.9%)、4位予算が足りない(31.2%)、5位CRMツールを活用できていない(28.2%)となっており、主にリソース不足によりCRM対策が不十分なことが伺えます。
多くのECサイト運営者は日々の様々な業務に追われており、一度自社の商品を購入してくれたお客様へのアプローチが十分には出来ていない現実があります。
新規顧客獲得施策は1カ月で新規顧客が何人獲得できた、その顧客獲得コストはいくらだった、とすぐに結果が分かるのに比べ、CRM施策は既存顧客一人当たりのLTVが最大化するよう長期にわたり施策をする必要があるためすぐに結果がわかりません。新規顧客獲得を最優先事項と捉えCRM施策は事業成長に重要なのはわかっているけれど、緊急性が感じられないので後回しになっているのが現状です。重要性を理解していても行動しなければいつまでたっても事業成長は望めません。新規獲得に力を入れているからこそ、リピーター対策を重視しCRMに力を入れるべきです。新規獲得と既存顧客育成の両輪が回り始めるとEC事業は一気に拡大するからです。
CRMツールが活用できてない事実
限られた時間の中で効果的なCRM施策を行うためにはCRMツールやMAツールの活用が欠かせません。
人が介在しなくても顧客のデータの分析から配信まで自動的に行ってくれるこれらのツールは非常に有益ではありますが、ツールを導入したから問題が解決できるとは限りません。CRM施策が不十分だと回答した方の理由として5位CRMツールを活用できていない(28.2%)とあり、この理由はツール導入以前に複数の問題があります。
大まかには「ツール活用のリテラシー」「人的リソース」「ゴール設定及びノウハウ」などが挙げられます。
時間を確保するために高額なMAツールを導入したが活用リテラシーがなく設定に時間がかかるためツール活用が出来ず、結果CRM施策が失敗しているというケースは多いです。
CRMはやるべきことが山ほどある
一言でCRM施策と言っても実際にやらなければならない実務は多岐にわたります。
多くのEC企業でCRM施策が不十分な原因として人的リソースが足りないことを上げていますが、同じ条件でもより効率よく最短距離でCRM施策を実施している企業も存在します。
そのような企業はリソースがない中でどのようにCRM施策に向き合っているのでしょうか。
CRM施策に長けているEC企業はただやみくもにCRM施策を始めるのではなくまず、CRMツール導入前に最終的なゴールを設定します。
具体的には「既存顧客からの売上を前年度比で20%アップさせる」「既存のメール売上を2倍にする」等です。
そして至るまでの大まかなフローを描くことが重要です。それにより自社にとって何が足りないのかが明確になり課題が浮かび上がってきます。
そもそもデータはあるのか?使えるデータなのか?データからわかる現状の課題とは?(データ取得から分かる現状把握)課題に対する打ち手は何か?打ち手に代替案はあるか?(現状把握からの課題抽出及び解決策の立案)等最終的な目標に至る道筋を予め設計することで目的を持った戦略的CRM施策が可能となります。
戦略が定まったところでCRMツールの選定フェーズに移ります。注意が必要なのは「CRMツール制定の前」に目標設定及び自社が使えるリソースや課題感の把握を行っている点です。ただやみくもにリソースが足りないからCRMツールを導入するという考えではCRMツールを使いこなせず失敗する確率が高いです。そうではなく実現したい目標があるからCRMツールを導入するという視点がツールを使いこなすためには必要です。
CRMツール選定で必要な視点
CRMツール選定についてはまずECに特化しているCRMツールか否かが重要です。最新のCRMツールは顧客とのワントゥーワンコミュニケーションを取るものが主流となっておりリアルタイムで顧客を分析し自動配信に対応しています。
CRMツールはあくまで目標を実現するための道具でしかありません。設定が複雑でなく自社で行いたい施策がすぐに実装可能か確認する必要があります。場合によってはデモ画面等を見せてもらい実際の操作性を確認してからの方が良いでしょう。
またCRM施策の最終的なゴールは既存顧客との長期的な信頼関係を築き顧客一人当たりのLTVを最大化することです。そのためCRMツールの費用対効果が合うかどうかは慎重に見極める必要があります。高機能なツールは費用も高額になるため特に注意が必要です。
すべて手動配信は不可能
顧客へのメッセージ配信はECサイトによってまちまちですが、まだメールを活用したコミュニケーションをとるケースが多いと思います。
ECサイト運営者はメルマガを作成し日々消費者にとって有益な情報提供を行いますが、スポットでメルマガを一括送信するだけでは顧客に寄り添ったメッセージ配信とは言えません。顧客はより自分に寄り添ったメッセージ配信を好みます。具体的には誕生日にはバースデーメールを送信する、カゴ落ちした顧客にはフォローメールを送る、売れ筋ランキングをまとめて送る、在庫切れした商品が入荷した際に顧客にお知らせする、セール品を通知するなど顧客の関心に沿ったメール配信を行う事でベストな顧客体験を作る事が可能となります。
しかしながら、全てのメッセージ配信を手動で行うことは不可能です。
配信を自動化することで理想的なCRMを実現
CRM施策のゴールを定めCRMツールを導入後は自動化できる部分はどんどん自動化し、人が介在しなくても回る仕組みを構築することが重要です。CRMツールに任せる仕事と人が行わなければならない仕事に分け自動化できるものは仕組化していきます。自動配信メールは人が介在しなくてもシステムに任せることで最適なタイミングで最適なメッセージを届けてくれます。システムに任せられる作業的な仕事はシステムに任し、EC運営者は空いた時間を人が行わなければならないクリエイティブな仕事に費やすことが可能です。具体的には企画立案や、クリエイティブ制作等に時間を費やすことが可能です。
昨今ではAIを活用し顧客の趣味趣向を分析した精度の高い自動配信メールが可能となっているため人間が手動で配信するメールよりも成果が良い結果が得られています。
自動配信機能を積極的に活用することでリソースが少ないながらも効果的なCRM施策が実現可能です。
参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000181.000003149.html