OMO戦略を“売上成果”に変える方法──店舗とECをつなぐCRM設計の実践論

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OMOという言葉を耳にする機会は、ここ数年で一気に増えました。
店舗とECをつなぐ。オンラインとオフラインを統合する。そうした説明を聞くと、「うちはすでに会員データを共有しているからOMOはできている」と感じる方もいるかもしれません。

しかし、実際にはデータを統合しただけでは売上は伸びません。アプリを導入しても、会員IDを共通化しても、リピート売上が増えない企業は少なくありません。
OMOの本質は“チャネル統合”ではなく、“顧客体験を軸にしたLTV設計”にあります。

店舗とECを横断して顧客を理解し、その理解に基づいて適切なタイミングで適切なメッセージを届ける。この一連の設計があって初めて、OMOは売上成果へとつながります。言い換えれば、OMOは戦略であり、CRM設計の問題なのです。

本記事では、OMOの本質を整理したうえで、なぜ多くの企業で成果が出ないのかを構造的に解説します。
そして、店舗とECをつなぐだけで終わらせず、リピート売上を生むCRM設計へ落とし込む具体的な考え方と実践ステップをお伝えします。

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OMOとは何か?「店舗×ECをつなぐ」だけでは不十分な理由

OMO(Online Merges with Offline)は、直訳すると「オンラインとオフラインの融合」です。多くの企業がOMOを「店舗とECをつなぐ取り組み」と捉えていますが、実務で成果を出すためには、もう一段深い理解が必要です。

なぜなら、OMOは単なるシステム連携やデータ統合の話ではなく、顧客の購買行動そのものが変化した結果として生まれた“顧客中心のマーケティング思想”だからです。顧客がどこで商品を知り、どこで比較し、どこで購入し、どこでリピートするのか。その一連の体験を企業側が一貫して設計できるかどうかが、OMOの成果を左右します。

OMOが注目される背景には、生活者の購買行動がすでに「店舗かECか」という二択ではなくなった現実があります。たとえば、SNS広告を見て商品を知り、ECサイトで口コミを確認し、店舗で実物を触ってから購入する。そして後日、追加購入はECで行う。このような購買行動は、いまや珍しくありません。

つまり顧客にとっては、店舗もECも同じ「ブランドとの接点」でしかなく、チャネルの違いを意識していないのです。にもかかわらず企業側が「店舗施策」「EC施策」と分けて考えてしまうと、顧客体験は分断され、リピート購入につながりにくくなります。

OMOとオムニチャネルの違いは「起点」にある

OMOと似た言葉として「オムニチャネル」があります。どちらも店舗とECを統合する考え方ですが、実務で使い分けるなら“起点”が違うと理解すると分かりやすいでしょう。

オムニチャネルは、企業側の視点から「複数チャネルを統合して、どこでも買える状態を作る」考え方です。店舗・EC・アプリ・SNSなど、チャネルを増やし、連携させ、販売機会を広げるアプローチと言えます。

一方でOMOは、顧客側の視点から「購買体験を途切れさせない」ことを目的とします。顧客がオンラインで調べても、店舗で接客を受けても、ECで購入しても、同じブランドとして一貫した体験ができる状態を作る。これがOMOです。

この違いは、実務上かなり重要です。オムニチャネルは仕組みづくりが中心になりやすい一方、OMOは顧客体験を中心に施策設計を行うため、CRMやコミュニケーション設計が成果に直結します。

OMOの目的は「便利さ」ではなくLTVの最大化

OMOを推進する企業が陥りがちな誤解のひとつが、「顧客にとって便利になれば売上が伸びる」という考え方です。もちろん利便性は重要ですが、便利にしただけでは売上が継続的に伸びるとは限りません。

OMOで本当に狙うべき成果は、単発の購入ではなくリピート売上の増加、つまりLTV(顧客生涯価値)の最大化です。

たとえば、店舗で購入した顧客がECでも再購入する。ECで購入した顧客が店舗に来店する。購入後に適切なフォローがあり、自然に次の購買につながる。こうした流れができて初めて、OMOはビジネス成果として意味を持ちます。

逆に言えば、店舗とECの両方を運営していても、顧客がそれぞれ別の存在として扱われている状態では、OMOの効果は出ません。顧客視点では「同じブランドで買っている」のに、企業側が「別の顧客」として扱ってしまう。このズレがある限り、リピート売上を最大化することは難しくなります。

よくあるOMOの誤解:「アプリ導入=OMO」ではない

OMOを語る際に、特に注意したいのが「手段が目的化する」問題です。たとえば、以下のような取り組みはよく見られます。

  • 会員アプリを導入した
  • 会員IDを統合した
  • 店舗でポイントが貯まるようにした
  • 店舗受け取り(BOPIS)を導入した
  • EC在庫と店舗在庫を連携した

これらは確かにOMOの土台になり得る取り組みです。しかし、それだけでリピート売上が伸びるかというと、答えは「NO」です。

OMOの本質は、顧客の行動データをもとに「誰に、いつ、どんな体験を提供するか」を設計し、実行し続けることにあります。アプリもポイントも在庫連携も、すべてはそのための手段に過ぎません。

たとえば、アプリ導入後に「クーポンを一斉配信して終わり」になっているケースは非常に多いです。これでは顧客にとっては“割引を待つだけの仕組み”になり、ブランドへの愛着や継続購入にはつながりません。短期売上は上がっても、利益率が下がり、LTVが伸びない状態に陥りやすいのです。

OMOで重要なのは「顧客を一人として捉える」こと

OMOを実践する上で最も重要なのは、店舗とECの購買履歴を単にまとめることではありません。顧客を「ひとりの顧客」として捉え、その顧客がどんな体験をしているのかを理解し続けることです。

たとえば、店舗で高単価商品を買う顧客が、ECでは消耗品を買うケースがあります。店舗では接客を求め、ECでは手軽さを求めるケースもあります。こうした行動の違いを理解し、顧客ごとに適切なコミュニケーションを設計することが、OMOの成果を決定づけます。

この設計を支えるのがCRMです。CRMは単なる顧客管理ツールではなく、「顧客理解をもとに、リピート売上を増やす仕組み」を作るための中核となる考え方です。

OMOを推進するということは、言い換えれば「顧客体験の設計をCRMを軸に再構築する」ということでもあります。

次のセクションでは、なぜ多くの企業がOMOに取り組んでも売上成果につながらないのか、その原因となる“分断”の正体を整理していきます。

OMOが売上につながらない企業に共通する“分断”の正体

OMOに取り組んでいるにもかかわらず、リピート売上が思うように伸びない。こうした悩みを抱える企業には、ある共通点があります。それは「分断」です。

この分断は、システムの問題だけではありません。組織、データ、KPI、そして顧客理解そのものが分断されているケースが多く見られます。表面的には店舗とECがつながっているように見えても、実際の施策や意思決定の現場では、依然として“別の世界”として運営されているのです。

OMOを成果につなげるためには、この分断の正体を構造的に理解する必要があります。

データはあるのに使えない状態が生まれる理由

多くの企業では、すでに膨大な顧客データを保有しています。店舗の購買履歴、ECの購入データ、会員情報、メール配信履歴、LINEの開封履歴など、データ自体は存在しています。

それにもかかわらず、「結局、誰に何をすればいいのか分からない」という状態に陥ります。なぜでしょうか。

理由のひとつは、データが“蓄積”で止まっているからです。統合はしていても、分析や施策設計まで落とし込めていないケースが非常に多いのです。

たとえば、店舗とECの購買履歴が一つの会員IDにひも付いていたとしても、それをもとに「店舗購入後にECでフォローする」「EC購入後に来店を促す」といったシナリオが設計されていなければ、売上成果には直結しません。

データ統合はスタートラインに過ぎません。重要なのは、そのデータを活用して“顧客ごとの行動仮説”を立て、具体的な施策に変換できるかどうかです。

店舗とECでKPIが分かれている問題

もうひとつの大きな分断は、KPIの分断です。

店舗部門は来店客数や店舗売上を重視し、EC部門はCVRやROASを追う。この構造自体は自然ですが、問題は「顧客のLTV」という共通目標が置かれていない場合です。

たとえば、ECで獲得した新規顧客が、その後店舗で継続購入しているにもかかわらず、部門ごとに評価されるとEC側の成果としては見えません。逆に、店舗で接客した顧客がECでリピート購入しても、店舗側の評価には反映されないことがあります。

このような状態では、部門最適は進んでも全体最適は進みません。OMOはチャネルを横断して顧客を育てる戦略である以上、KPIもまた横断的に設計する必要があります。

具体的には、以下のような指標を共通言語として持つことが重要です。

指標見るべきポイント
LTV店舗・EC合算での顧客生涯価値を把握しているか
チャネル横断購入率店舗顧客がECで購入している割合、その逆も含め把握できているか
購入間隔チャネルをまたいだ購入サイクルが短縮しているか

こうした指標がなければ、OMOは単なるスローガンで終わってしまいます。

施策が単発化・属人化する構造

OMOが機能しない企業では、施策が単発で終わる傾向があります。

「アプリをリリースした」「キャンペーンを実施した」「クーポンを配布した」。しかし、その施策が顧客育成のストーリーの中に組み込まれていないため、継続的なリピート売上にはつながりません。

属人化も大きな課題です。特定の担当者がデータを見て施策を考えているが、異動や退職でノウハウが消える。こうした状況では、OMOの取り組みは持続しません。

本来OMOは、顧客の行動データをもとにした“再現性のある仕組み”であるべきです。誰が担当しても、一定のロジックで顧客を育成できる状態を作ることが重要です。

顧客が分断されているという最大の問題

最も深刻なのは、企業側ではなく“顧客が分断されている”ことです。

たとえば、店舗で頻繁に購入している顧客が、ECでは「休眠顧客」として扱われているケースがあります。逆に、ECで優良顧客であっても、店舗では通常顧客として扱われていることもあります。

顧客から見れば同じブランドで買っているのに、企業側のデータ構造や評価基準の違いによって、まったく異なる扱いを受ける。このズレが、顧客体験の一貫性を損ないます。

OMOを成功させるためには、顧客をチャネル単位で見るのではなく、「ひとりの顧客の時間軸」で捉える視点が不可欠です。いつ出会い、どこで購入し、どのくらいの間隔でリピートしているのか。その流れを理解して初めて、適切なコミュニケーション設計が可能になります。

次のセクションでは、この分断を解消し、OMOをリピート売上につなげるためのCRM設計の全体像を具体的に整理していきます。

OMOでリピート売上を伸ばすCRM設計の全体像

OMOを本当に売上成果へと変えるためには、「店舗とECをつなぐ」発想から一歩進み、「顧客をどう育てるか」という視点へ転換する必要があります。その中核となるのがCRM設計です。

ここでいうCRM設計とは、単なる顧客管理ではありません。顧客の行動データをもとに、どの顧客に、どのタイミングで、どんな接点を設計するかを体系化することを指します。OMOの成否は、この設計思想にかかっていると言っても過言ではありません。

OMOにおけるCRMの役割は「顧客の時間軸をつなぐ」こと

店舗とECを運営している企業では、接点が増えたことでデータも増えています。しかし、そのデータが「点」のままでは意味がありません。

たとえば、以下のようなデータは多くの企業が保有しています。

  • 店舗での購買履歴
  • ECでの購入・閲覧履歴
  • メールやLINEの開封・クリック履歴
  • 来店頻度や来店エリア
  • 購入金額やカテゴリ傾向

重要なのは、これらを単なる履歴として並べるのではなく、「顧客の時間軸」に沿って整理することです。

ある顧客が、SNS広告経由でECに流入し、初回購入後に店舗で試着し、2回目の購入をECで行った。この一連の流れを理解しなければ、適切なフォローは設計できません。

CRMの役割は、この時間軸を可視化し、次に起こり得る行動を予測し、それに対するコミュニケーションを設計することにあります。OMOはチャネル統合の戦略ですが、CRMは顧客理解を実行に変える仕組みなのです。

「顧客理解 → シナリオ設計 → 接点最適化」の流れ

OMOでリピート売上を伸ばすための基本構造は、以下の3ステップに整理できます。

ステップ内容
顧客理解チャネル横断での購買履歴や行動傾向を分析し、顧客の状態を定義する
シナリオ設計顧客の状態に応じて、どのタイミングでどんな施策を実行するかを設計する
接点最適化メール・LINE・店舗接客など、最適なチャネルでコミュニケーションを実行する

まず重要なのは「顧客の状態」を定義することです。新規顧客なのか、2回目購入前なのか、優良顧客なのか、休眠顧客なのか。これをチャネル横断で把握しなければ、OMOの設計は始まりません。 次に、その状態ごとにシナリオを設計します。たとえば、EC初回購入後に店舗来店を促すフォローを行うのか、店舗初回購入後にEC限定商品の情報を届けるのか。顧客の行動パターンに応じて設計する必要があります。 最後に、どのチャネルでコミュニケーションするかを決めます。若年層ならLINEが有効かもしれませんし、購入単価が高い顧客にはメールやパーソナル接客が有効な場合もあります。チャネルは目的ではなく手段です。

KPI設計がOMO成果を左右する

OMOで失敗する企業の多くは、施策を実行しても効果を測る指標が曖昧です。CRM設計と同時に、KPI設計も見直す必要があります。

重要なのは、チャネル単体の指標ではなく、顧客全体の価値を測る指標です。

たとえば、以下のような指標がOMOにおいて有効です。

  • チャネル横断LTV
  • 2回目購入率(F2転換率)
  • 購入間隔の短縮率
  • 店舗×ECのクロス購買率
  • 休眠顧客の復帰率

これらを継続的に追うことで、施策がリピート売上にどう影響しているかが見えてきます。

特にF2転換率は、リピート売上の起点となる重要指標です。ECで初回購入した顧客が、その後店舗やECで再購入しているか。店舗で初回購入した顧客がECで再購入しているか。この横断的な視点がOMOの成果を左右します。

OMOは「施策の数」ではなく「設計の質」で決まる

OMOに取り組む企業の中には、「施策をたくさん打てば成果が出る」と考えるケースもあります。しかし、実際には施策の数よりも設計の質が重要です。

顧客の状態を定義せずにクーポンを配信しても、短期売上しか上がりません。チャネルごとに異なるメッセージを送り続ければ、顧客体験はむしろ分断されます。

重要なのは、顧客ごとに一貫したストーリーを設計することです。初回購入から2回目購入、そして優良顧客化までの流れを描き、その中で店舗とECをどう使い分けるかを決める。この設計があって初めて、OMOは持続的なリピート売上につながります。

次のセクションでは、このCRM設計を実際の現場でどのように実行していくのか、店舗×ECデータを統合して施策に落とし込む具体的なステップを解説します。

店舗×ECデータを統合して“施策に落とす”実践ステップ

OMOをリピート売上につなげるには、理念や構造理解だけでは不十分です。実際の現場で「何を」「どの順番で」進めるのかが明確になっていなければ、施策は止まります。

ここでは、店舗×ECデータを統合し、それを具体的なCRM施策へ落とし込むまでの実践ステップを整理します。ポイントは、最初から完璧を目指さないことです。重要なのは、最小構成で始め、改善可能な状態をつくることにあります。

統合すべきデータは“全部”ではない

まず誤解されやすいのが、「すべてのデータを統合しなければならない」という思い込みです。確かに理想は全データ統合ですが、実務では優先順位をつけることが重要です。

リピート売上に直結しやすいデータは、以下の4領域に整理できます。

データ領域具体例
購買データ購入日、購入金額、購入商品、チャネル(店舗/EC)
行動データ閲覧履歴、来店履歴、アプリ利用履歴
属性データ年齢、性別、エリア、会員ランク
接触履歴メール・LINE配信履歴、開封・クリック状況

この4つが統合されていれば、基本的なシナリオ設計は可能です。逆に言えば、在庫データや詳細な閲覧スクロール率などがなくても、初期段階では大きな支障はありません。

重要なのは、「誰が」「いつ」「どこで」「何を買ったか」を横断的に把握できる状態を作ることです。

セグメント設計は“顧客の状態”から始める

データ統合ができたら、次に行うのがセグメント設計です。ここで多くの企業が失敗するのは、属性だけで分類してしまうことです。

年齢や性別で分けることは意味がありますが、リピート売上を伸ばすためには「顧客の状態」で分類する必要があります。

たとえば、以下のような状態分解が有効です。

  • 初回購入のみで止まっている顧客
  • 店舗のみで購入している顧客
  • ECのみで購入している顧客
  • 店舗とECを横断している優良顧客
  • 一定期間購入がない休眠顧客

この状態定義ができると、施策は一気に具体化します。初回購入のみの顧客には2回目購入促進施策を、店舗のみの顧客にはEC体験の導線を、休眠顧客には再接触施策を設計できます。

OMOでは、「チャネル別」ではなく「状態別」に設計することが成果の分岐点になります。

シナリオは“1本”から始める

実践段階で最も重要なのは、最初から複雑なシナリオを作らないことです。多くの企業が、分岐だらけの高度なシナリオを設計しようとして止まります。

まずは、もっとも売上インパクトが大きいシナリオを1本作ることから始めます。

たとえば、以下のような流れです。

Phase具体アクション
Plan「EC初回購入者のF2転換率を5%向上させる」目標設定。店舗来店促進クーポン+活用方法コンテンツ配信を設計
Do購入7日後にメール配信。14日後にLINEで来店特典通知
Check30日以内の再購入率と来店率を測定
Act反応が高い商品カテゴリ別に配信内容を最適化

このように、顧客状態を起点にしたシナリオを1つ回すだけでも、OMOの成果は見え始めます。重要なのは、完璧な設計ではなく、改善可能な設計です。

店舗を“施策のゴール”にする発想

OMO施策を設計する際に効果的なのは、店舗をゴールに設定することです。店舗は接客や体験を通じて顧客満足度を高めやすく、LTV向上に直結しやすい接点だからです。

たとえば、EC購入者に対して店舗限定イベントの案内を送る。店舗購入者に対してEC限定商品の情報を送る。このようなクロス導線を設計することで、顧客の接点回数が増え、結果として購入頻度が上がります。

OMOで重要なのは、「どちらのチャネルが売上を取ったか」ではありません。「顧客がブランドとの接点を何回持ったか」という視点です。この接点回数を増やす設計こそが、リピート売上を押し上げます。

次のセクションでは、こうしたシナリオを実行する上で重要となる、メール・LINE・SMSなどのメッセージ配信設計について具体的に解説します。

OMOで成果が出るメッセージ配信設計(メール・LINE・SMS)

OMOの設計思想やシナリオが描けても、それを顧客に届けられなければ意味がありません。リピート売上を左右するのは、最終的には「コミュニケーションの質」です。

ここで重要になるのが、メール・LINE・SMSなどのメッセージチャネルをどう設計するかという視点です。チャネルを増やすことが目的ではありません。顧客の状態と文脈に応じて、最適な手段を選ぶことが成果を分けます。

チャネルは“役割分担”で考える

まず整理したいのは、各チャネルの特性です。すべてのメッセージを同じ内容で一斉配信していては、OMOの強みは活かせません。

一般的に、以下のような役割分担が考えられます。

チャネル活用の方向性
メール情報量が多いコンテンツ、商品ストーリー、定期フォロー
LINE短文で即時性のある通知、クーポン、来店促進
SMS開封率を活かした重要通知、期限付き案内

メールは詳細説明やブランド価値を伝えるのに向いています。一方でLINEは開封率が高く、短期的なアクションを促す施策に適しています。SMSは到達率が高いため、休眠顧客への再接触などに効果的です。

OMOでは、顧客の直近行動や購買履歴に応じてチャネルを使い分ける設計が重要になります。

一斉配信から“状態別配信”へ

多くの企業では、依然として一斉配信が中心です。しかし、OMOを本格的に推進するなら、状態別配信への移行は避けて通れません。

たとえば、以下のような違いを設けます。

  • 初回購入直後の顧客には、使い方フォローと店舗特典を案内
  • 2回目購入前の顧客には、関連商品のレコメンド
  • 優良顧客には限定イベントの招待
  • 休眠顧客には再来店のきっかけとなるコンテンツ

重要なのは、割引だけに頼らないことです。価格訴求に偏ると、ブランド価値は育ちません。商品の背景や活用シーン、スタッフのおすすめなど、体験価値を伝えるメッセージ設計がLTVを押し上げます。

店舗連動型コミュニケーションの具体例

OMOならではの強みは、店舗と連動したコミュニケーションができることです。

たとえば、店舗での購入後にサンクスメールを送り、その商品の活用方法を動画で紹介する。来店から30日後に関連商品の案内をLINEで送る。誕生日月には、店舗限定の特典を通知する。

こうした設計により、顧客は「ブランドが自分を覚えてくれている」と感じます。この感覚こそが、リピート購入を後押しします。

また、来店履歴を活用すれば、一定期間来店がない顧客に対して「お近くの店舗で新商品が入荷しました」といった地域連動型のメッセージも可能になります。

OMOで成果を出す企業は、単に配信回数を増やすのではなく、顧客の時間軸と体験文脈を意識しています。

配信頻度よりも“意味のある接点”を増やす

配信設計で注意すべきなのは、頻度を増やせば成果が出るわけではないという点です。過剰な配信は解除やブロックにつながります。

重要なのは、顧客にとって意味のある接点を増やすことです。購入後のフォロー、来店後のサポート、商品入れ替えタイミングの案内など、顧客行動に寄り添ったコミュニケーションが必要です。

OMOは、チャネルを横断して顧客体験を設計する戦略です。その最前線にあるのがメッセージ配信です。設計思想が反映されていなければ、どれだけ高度なツールを使っても成果は出ません。

次のセクションでは、こうした施策を継続的に改善するための運用体制とPDCAの回し方について解説します。

OMOを成功させるために必要な運用体制と改善サイクル

OMOの設計やシナリオが整っても、運用体制が伴わなければ成果は定着しません。多くの企業で見られるのは、「最初は盛り上がるが、半年後には形骸化する」というパターンです。

その原因は明確です。OMOが“プロジェクト”で終わってしまい、“仕組み”になっていないからです。リピート売上を伸ばすには、継続的に改善できる体制が必要です。

OMOはマーケティング部門だけの仕事ではない

OMOは、EC担当者やデジタルマーケティング部門だけで完結するものではありません。店舗運営、CRM担当、システム部門、場合によっては商品企画やMD部門も関わります。

しかし実際には、「データは本部にある」「店舗は施策を知らない」「ECと店舗で会議が別」という状況が少なくありません。

OMOを成功させるためには、少なくとも以下の共通言語が必要です。

  • チャネル横断LTVを重視する方針
  • 顧客状態別のセグメント定義
  • 主要KPIの共有

これらが共有されていなければ、部門最適が進み、全体最適は進みません。

たとえば、店舗スタッフが「このお客様はECでもよく購入している優良顧客だ」と把握できれば、接客の質は変わります。逆に、EC側が「この顧客は店舗来店頻度が高い」と理解していれば、来店前後のフォロー施策が設計できます。

OMOはデータ連携の問題ではなく、組織連携の問題でもあるのです。

改善サイクルは“月次”で回す

OMO施策は、単発キャンペーンとは違い、継続的な改善が前提です。そのためには、改善サイクルを明確に設計する必要があります。

おすすめは、月次単位で以下を確認することです。

確認項目見るポイント
F2転換率初回購入者の再購入率が上がっているか
チャネル横断率店舗とECをまたいで購入する顧客が増えているか
休眠復帰率再接触施策が成果につながっているか

ここで重要なのは、「施策の実施数」ではなく「指標の変化」に焦点を当てることです。施策をたくさん実行しても、数値が動かなければ設計を見直す必要があります。

OMOは構造戦略です。短期的な売上変動ではなく、顧客の行動変化を見て判断する姿勢が求められます。

属人化を防ぐ仕組みづくり

もうひとつの重要ポイントは、属人化の排除です。

OMO施策が特定の担当者の経験や勘に依存している場合、その人が異動すれば止まります。これを防ぐには、シナリオ設計やセグメント定義をドキュメント化し、再現可能な状態にすることが重要です。

たとえば、以下を明文化します。

  • 顧客状態の定義基準
  • 各シナリオの目的とKPI
  • 配信タイミングとチャネル選定理由
  • 改善判断の基準

これらが整理されていれば、担当者が変わってもPDCAは回ります。

OMOは一度作って終わりの施策ではありません。顧客行動は常に変化します。その変化を捉え、改善を続けられる体制こそが、リピート売上を持続的に伸ばす鍵になります。

次のセクションでは、これからOMO CRMを始める企業が、最初に決めるべき重要なポイントを整理します。

OMO CRMを始めるなら、最初に決めるべき3つのこと

ここまでOMOの本質、分断の構造、CRM設計、施策実行、運用体制まで整理してきました。しかし実務の現場では、「結局どこから始めればいいのか分からない」という声が最も多く聞かれます。

OMOは概念としては理解できても、最初の一歩を誤ると複雑化し、途中で止まります。そこで重要になるのが、“最初に決めるべきこと”を明確にすることです。

誰のLTVを伸ばすのかを決める

OMOを始める際に、いきなり全顧客を対象に設計しようとする企業は少なくありません。しかし、これは現実的ではありません。

まず決めるべきは、「どの顧客層のLTVを伸ばすのか」です。

たとえば、以下のような優先順位が考えられます。

  • EC初回購入者のF2転換率を上げる
  • 店舗のみ利用顧客をECにも送客する
  • 休眠顧客を一定割合復帰させる

すべて重要ですが、同時にやる必要はありません。自社の売上構造を分析し、もっともインパクトの大きい顧客層から着手することが合理的です。

OMOは戦略です。戦略には必ず優先順位があります。

店舗とECの役割を再定義する

次に重要なのは、店舗とECの役割を明確にすることです。

たとえば、店舗を体験強化の場と定義するのか、客単価向上の場と定義するのか。ECを利便性重視のチャネルとするのか、商品ライン拡張の場とするのか。

この役割定義が曖昧なままだと、施策は場当たり的になります。

OMOでは、店舗とECが競合するのではなく、補完関係にあることが前提です。店舗での接客がECでの再購入を後押しし、ECでの情報提供が店舗来店を促す。この循環構造を設計できるかどうかが、成果を左右します。

最初は“1シナリオ”で十分

最後に強調したいのは、最初から完璧なOMO体制を作ろうとしないことです。

多くの企業が、全チャネル連携、全顧客セグメント、複雑な自動配信を目指し、結果として手が止まります。重要なのは、最小単位で成功体験を作ることです。

たとえば、EC初回購入者向けのクロスチャネル施策を1本回し、F2転換率が改善するかを検証する。これだけでも十分にOMOの価値は検証できます。

成功事例が1つできれば、社内の理解も進みます。OMOは一度に完成させるものではありません。段階的に拡張する構造戦略です。

OMOは「仕組み化」してこそ意味がある

最後に改めてお伝えしたいのは、OMOは施策の集合ではないということです。

顧客を一人として捉え、チャネルを横断して育成し、リピート売上を最大化する。そのための設計思想と仕組みづくりこそがOMOの本質です。

店舗とECをつなぐだけでは、売上は持続的に伸びません。CRMを軸に顧客体験を再設計し、改善を続けられる状態を作ることが、OMOを“売上成果”へ変える唯一の方法です。

次に、この記事全体を振り返り、OMO戦略の本質を改めて整理します。

OMOは、店舗とECをつなぐ取り組みそのものではありません。本質は、顧客をチャネルではなく「ひとりの顧客」として捉え、その時間軸に沿って体験を設計することにあります。データを統合することは出発点に過ぎず、そこから顧客理解を深め、状態に応じたシナリオを描き、最適な接点を設計できるかどうかが成果を分けます。

リピート売上は偶然生まれるものではありません。初回購入から優良顧客化までの流れを構造化し、改善を続けられる仕組みを持つ企業だけが、LTVを持続的に伸ばすことができます。OMO戦略を“売上成果”へ変える鍵は、チャネルの数ではなく、CRMを軸にした設計の質にあるのです。

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執筆者情報

中村 隆嗣 中村 隆嗣

株式会社ファブリカコミュニケーションズ アクションリンクチーム 部長

2003年に北国からの贈り物へ入社。自社サイトの立ち上げから参画し月商3億円を超える成長まで導く。楽天/Yahoo!/Amazon/ぐるなびなど全店のマーケティング戦略責任者として各モールにおいて数々の賞を受賞。 2014年株式会社メディックスに入社し、年商2500億規模の大手製薬会社や外資系アパレルブランドなど、メーカー直販ECの事業コンサルティングを手がける。 コンサルティング先で多く見られたCRMの課題を解決すべく、2018年アクションリンクを立ち上げ、2023年ファブリカコミュニケーションズにジョイン。現在に至る。

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