WEB接客ツールとCRMツールの目的と機能
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顧客接客から顧客育成へ重要性
経済産業省の調べによると2021年の日本国内のBtoC-EC(消費者向け電子商取引)市場規模は、20.7兆円(前年19.3兆円、前々年19.4兆円、前年比7.35%増)にまで拡大し特にコロナ禍における外出規制やEコマースの利用推奨により物販系Eコマース市場が大幅に拡大しました。
EC市場への参入企業も増加の一途をたどり各オンラインショップ間での顧客の囲い込み競争が激化しています。
各企業のオンラインショップに訪れるユーザーとの一連のコミュニケーションを「集客」「接客」「顧客育成」と分類した場合、それぞれ「デジタルマーケティング」、「Web接客(オンライン接客)」、「CRM(顧客管理)」に該当します。
今までは多くの企業が投資対効果を考え「集客」=「デジタルマーケティング」に力を入れ、いかに効率よく新規顧客獲得を行うかという点に注目が集まっていました。しかしながら、市場参入企業が増えると同時に年々、顧客獲得コスト(CPA)の上昇が続き、もはや集客の効率化だけでは事業成長をすることが難しくなっています。
加えて昨今、Google、Facebook、Yahoo!等のプラットフォーム型の運用広告において広告掲載審査基準の厳格化により依然と比較して広告出稿の表現が規制され主に化粧品、健康食品といった単品リピート通販ビジネスにおいて思うような集客ができないケースも目立ってきています。
そんな状況の中で、注目を集めているのが、集客した顧客に対していかに丁寧に接客を行い、最適な顧客体験をさせてリピーターに育成するかというWeb接客施策とCRM施策です。
EC通販ビジネスの事業成長には顧客価値(LTV)の最大化が条件となるため、新規顧客に対する接客及び既存顧客の育成の両面での対策がどうしても必要となります。
オンラインショップにおけるこれらの施策は以前から重要な施策だと分かってはいるものの、リソース等の兼ね合いから優先順としてはさほど高くないものでした。
しかしながらEC市場の拡大と共に今では新規集客と同様にオンラインショップではなくてはならないものとなっています。
Web接客ツール及びCRMツールと市場規模
2018年のIT調査会社の調べによるとWEB接客市場は急拡大しており2016年度の売上金額は17億円、前年度比142.9%増の急速な伸びとなっており2021年度にはWeb接客市場の売上金額は75億円に達すると予想されています(※1)。
オンラインショップを実際の店舗と同様に顧客中心の接客を心がけるサイトが増えていることが伺えます。
同時に、既存顧客の育成を行うCRMに関しても2020年のデジタルコマースアプリケーション市場は前年比成長率9.9%、145億1,900万円とこちらも急成長しています(※2)。
昔から通販ビジネスにおいてLTV向上を目的としたCRM施策は盛んに行われていました。
オフラインの施策としては購入者への同梱物や、テレマーケティングなどです。
それに加えて時代の流れと共にオンラインでも顧客中心の適切なメッセージ配信を行う考え方が広がり昨今では各ECサイトでCRMツールの導入が加速しています。
Web接客ツールとは
オンラインショップにおけるWeb接客ツールとは、オンラインショップに訪れたユーザーに対して適切な対応や案内を行う接客ツールの総称です。
実店舗での接客対応に似せた形で適切な接客を行うことでオンラインでのさまざまな行動を促進し、会員登録や質疑応答、商品の購入率を上げ、顧客体験を向上させることを目的としています。
オンラインで集客したお客様に対してリアルタイムで接客を行い購入地点まで導くために効果を発揮します。
オンラインサイトでの対応がスムースなものであれば、顧客満足度が向上し次回もこのサイトで購入をしたいと思うため結果的にLTV向上に貢献します。
CRMツールとは
これに対してCRMツールとは顧客満足度と顧客ロイヤルティの向上をはかり、売り上げ・収益の向上を目的としたコミュニケーションツールの総称です。
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オンラインショップの理想的なCRM施策は自社の既存顧客を一元管理して、それぞれの顧客フェーズごとに分析・分類し、Eメール等のコミュニケーションツールを通じて必要な施策を打ち、最終的に優良顧客へと育成することです。
そのためには自社の既存顧客の状態がどのような状態なのかを一元的で把握でき、それに対する施策が打てる専用ツールが必要となります。
それがCRMツールです。
単純なメール配信ツールとCRMツールが異なる点は、CRMツールは単純にメールを送信するだけではなく、顧客の様々なデータに基づき分析が行え、セグメントを抽出でき、顧客一人ひとりの状況に合わせた最適なメッセージを届けられる点にあります。
Web接客ツールとCRMツールの共通点
Web接客ツールとCRMツールの共通点はベストな顧客体験を実現するという点にあります。
WEB接客では現実の店舗接客と同じくリアルタイムでお客様と接点を持ち、見せたいコンテンツに適切に誘導させ、顧客の疑問に答え、スムースにフォームに個人情報の入力を促しコンバージョン率を向上させます。
オンラインショップ上のユーザーの離脱原因となるさまざまな障害を取り除くことで快適なオンラインショッピングを実現させます。
CRMツールも同様に顧客一人ひとりの状態に合わせて最適なメッセージ配信を行う事で最終的にはLTVの向上をはかります。
一方的なメッセージ配信とは異なり顧客の購買行動や趣味嗜好に合わせたメッセージ配信ができるのもCRMツールならではの機能です。
Web接客ツールとCRMツールの差異点
Web接客ツールは快適なオンラインショッピングを実現するという目的でリアルタイムでの施策中心となります。
具体的には、オンラインショップ上での購入率やリピート率、顧客単価を上昇させることを目的としています。
従って、例えば新規で集客したお客様に対して初回購入を促すことが出来ても、2回目以降の購入を継続的に促したり、休眠顧客を掘り起こしたりすることはできません。
これらリピーター対策はCRMツールで行う事であり両ツールでは目的が異なる点に注意が必要です。
CRMツールの中にはリアルタイムで接客機能を兼ね備えたものも存在しますが、基本的には顧客情報を一元管理し分析を行いLTV最大化のためのメッセージ配信を行うツールとなります。
CRMツールは顧客が継続的なメッセージ配信を自動で行うことが可能なことから使いこなせれば業務負荷が軽減し効率的に売り上げが向上できる利点があります。
まとめ
DX(デジタルトランスフォーメーション)化が叫ばれる中で各企業でも事業変革に向けたデジタル化対応を理由にIT投資が活発化しています。
またDX化と並行してIT人材の不足等も新たな問題も浮上してきており、DX化の差がそのまま企業競争力に直結する時代になってきています。EC通販市場においてもデジタル化の流れは進んでおり、今後集客面だけではなくお客様との接点と顧客育成強化の観点からWeb接客ツールとCRMツールの導入は必須という時代が到来しつつあります。
(※1)https://www.itr.co.jp/company/press/180123PR.html(※2)https://www.idc.com/getdoc.jsp?containerId=prJPJ48076521