KPIを設定する際に陥りがちな罠とは

CRMにおいてリピート売上増という目指す結果を得るためには、虚栄の指標に惑わされないようにすることが重要です。
多くの顧客を獲得し、多くの顧客にリピーターとして定着してもらい、EC事業を伸ばしていくことが最終ゴールです。

今回の記事ではCRMにおけるKPIを設定する際に陥りがちな間違いについてご紹介致します。

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1.結果指標しか見ていない

EC事業でよくあげられる売上、セッション数、注文件数、注文率などは「結果指標」です。
結果指標だけでは課題に対する本当の原因が見えず、次にどんな行動をとるべきかの
具体的なアクションが見えてこないことになります。なぜ結果指標が今の数字になっているかを
説明できる別の指標をKPIに定めるべきです。

2.アクション出来ない指標を見る

例えば新規顧客比率といったスコープの大きな指標だけを追っても、次に起こすべき具体的アクションが見えにくくなります。
こうした粗い指標ではなく、例えば売れ筋商品の新規購入からのリピート率など、
ターゲットが明確で改善時のインパクトを期待できる指標をもとに施策を考えることで
KPIから成果につながる改善を行うことができます。

3.KPIを設定しすぎて優先順位が不明瞭

より詳細に分析しようと多くのKPIを設定し、その全てを伸ばそうとすると
限られたリソースを有効に使うことが出来ず、ロジックは正しくても期待する効果が出せないことがあります。
その結果、KPIは運用にばかり大変な労力がかかり業績改善につながらない、と間違った評価がされてしまう場合があります。

EC事業で重視すべき代表的なKPI

EC事業の成果を正しく把握するには、売上だけを見るのではなく、売上が生まれるまでの各プロセスを数値で確認することが重要です。

ECサイトの売上は、基本的に「サイトへの訪問者数」「購入率」「客単価」の掛け合わせで決まります。さらに、事業を継続的に成長させるためには、顧客獲得にかかった費用やリピート状況、利益、在庫などもあわせて確認する必要があります。

代表的なKPIは、以下のとおりです。

KPI確認できること
訪問者数・セッション数ECサイトにどれだけユーザーを集められているか
CVR訪問者のうち、どれだけ購入につながったか
客単価1回の注文で平均いくら購入されているか
F2転換率初回購入者が2回目の購入に進んだ割合
リピート率一定期間内に再購入した顧客の割合
LTV1人の顧客が継続的にもたらす売上や利益
CPA・CAC新規顧客の獲得にどれだけ費用がかかったか
売上総利益売上から原価を差し引いた利益がどれだけ残ったか
在庫回転率・欠品率在庫を効率的に販売できているか

訪問者数・セッション数

訪問者数やセッション数は、ECサイトへの集客状況を確認するための指標です。広告、自然検索、SNS、メールなど、流入経路別に数値を確認することで、どの集客施策がサイトへの訪問につながっているかを判断できます。

訪問者数が伸びていない場合は、広告の配信内容やSEO、SNS運用など、集客施策の見直しが必要です。ただし、アクセスが増えても購入されなければ売上にはつながらないため、CVRとセットで確認しましょう。

CVR

CVRは、ECサイトを訪れたユーザーのうち、商品を購入した人の割合です。一般的には、次の計算式で算出します。

CVR=注文件数÷セッション数×100

CVRが低い場合は、商品ページの情報不足、購入導線の分かりにくさ、送料や配送条件、決済方法、入力フォームの使いにくさなどが購入を妨げている可能性があります。

アクセス数を増やすだけでなく、現在訪れているユーザーを購入につなげるという視点で改善することが大切です。

客単価

客単価は、顧客1人または1注文あたりの平均購入金額です。

客単価=売上高÷注文件数

関連商品の提案、まとめ買い、セット販売、送料無料ラインの設定、上位商品の提案などにより、客単価の向上を目指せます。

ただし、値上げや過度なまとめ買いの促進によって購入率が下がる可能性もあるため、CVRや購入点数とあわせて確認する必要があります。

F2転換率

F2転換率は、初回購入者のうち、2回目の購入に進んだ顧客の割合です。

F2転換率=2回目の購入者数÷初回購入者数×100

EC事業では、初回購入後にそのまま離脱する顧客も少なくありません。そのため、購入後のフォローメールやLINE配信、商品の活用方法の案内、再購入時期に合わせた提案などを行い、早い段階で2回目の購入につなげることが重要です。

F2転換率を見ることで、初回購入後のCRM施策が機能しているかを判断できます。

リピート率

リピート率は、一定期間内に再購入した顧客の割合です。F2転換率が初回から2回目への移行に注目する指標であるのに対し、リピート率は既存顧客全体の継続状況を把握するために用いられます。

リピート率が低下している場合は、商品への満足度だけでなく、購入後のコミュニケーションや再購入のタイミング、競合商品への乗り換えなども確認する必要があります。

商品カテゴリーや購入回数、最終購入日などで顧客を分けて分析すると、離脱しやすい顧客層を見つけやすくなります。

LTV

LTVは「顧客生涯価値」と呼ばれ、1人の顧客が取引期間を通じてもたらす売上や利益を表す指標です。

簡易的には、次のような考え方で算出できます。

LTV=平均客単価×平均購入回数×平均継続期間

初回購入時の売上だけでは採算が合わない場合でも、その後の継続購入によって十分な利益を得られるケースがあります。そのため、新規顧客の獲得費用を判断する際は、初回売上だけでなくLTVとのバランスを見ることが重要です。

CPA・CAC

CPAは、広告などの施策によって1件の成果を獲得するためにかかった費用です。一方、CACは広告費だけでなく、営業費や人件費なども含め、新規顧客1人を獲得するためにかかった費用を表します。

CAC=新規顧客獲得にかかった費用÷新規顧客数

CPAやCACが低くても、値引きや広告費によって利益がほとんど残っていなければ、事業として健全とはいえません。LTVや売上総利益と比較しながら、許容できる顧客獲得費用を設定しましょう。

売上総利益

売上高が増えていても、商品の原価や送料、広告費、決済手数料などが増えれば、実際に残る利益は少なくなります。

そのため、売上だけではなく、売上から商品原価を差し引いた売上総利益も確認する必要があります。キャンペーンや値引きを実施する際も、注文件数だけで評価せず、どれだけ利益に貢献したかまで検証することが重要です。

在庫回転率・欠品率

商品を保有するEC事業では、在庫に関するKPIも欠かせません。在庫回転率が低い商品は、長期間売れ残り、保管費用や廃棄リスクを増加させる可能性があります。

一方、欠品が多い場合は、需要があるにもかかわらず商品を販売できず、売上機会を失っている状態です。在庫を減らしすぎるのではなく、販売予測や商品の売れ行きを確認しながら、過剰在庫と欠品のバランスを取る必要があります。

すべてのKPIを同じ優先度で管理する必要はありません。まずは自社の課題が「集客」「購入率」「客単価」「リピート」「収益性」のどこにあるのかを整理し、改善施策と直接関係する指標を選びましょう。また、数値を設定するだけで終わらせず、月次や週次で推移を確認し、施策の実行と検証を繰り返すことが大切です。

課題を明確にするKPIツリーの活用法

数多くの数値を管理する際に役立つのが全体像を構造化するフレームワークです。 最終的な目標を頂点として構成要素を木の枝のように分解していきます。 このツリーを作成することで目標達成に向けた課題がどこにあるのかを素早く特定できます。 具体的な改善施策の立案がスムーズに進むようになります。

まとめ

ゴールとなる指標に対し、しっかりとした因果関係があり、かつコントロール可能な
最優先の指標を見つけ、しっかりと追っていくことが重要です。
CRMの場合、それは新規顧客のリピート率となります。
LTVはリピート率が上がった結果として改善する結果指標ですし、
その後の利用回数は初回リピート率が高ければ自ずと高くなるからです。

CRMでは多くの指標が登場しますが、本来の目的を忘れず、指標の裏に隠れた真の課題を見つけ解決することで
リピート売上の増加を達成することができます。
また、数字だけに注目するのではなく、その原因となった顧客心理にも目を向けることで
本質的な課題を解決することができます。

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執筆者情報

中村 隆嗣 中村 隆嗣

株式会社ファブリカコミュニケーションズ アクションリンクチーム 部長

2003年に北国からの贈り物へ入社。自社サイトの立ち上げから参画し月商3億円を超える成長まで導く。楽天/Yahoo!/Amazon/ぐるなびなど全店のマーケティング戦略責任者として各モールにおいて数々の賞を受賞。 2014年株式会社メディックスに入社し、年商2500億規模の大手製薬会社や外資系アパレルブランドなど、メーカー直販ECの事業コンサルティングを手がける。 コンサルティング先で多く見られたCRMの課題を解決すべく、2018年アクションリンクを立ち上げ、2023年ファブリカコミュニケーションズにジョイン。現在に至る。

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